「なんで最近覚えたことってすぐ忘れるんだろう?」
一生懸命に勉強したはずの知識が、数日後にはあやふやになる。
かと思えば、子どものころに覚えた掛け算九九や百人一首は、今でもスラスラ言えたりする。
…これ、ほんとーに不思議です。
私は仕事柄、新しいことを覚える場面が多いのですが、
頑張ってインプットしても、翌日にはすでに「あれ…なんだっけ…?」となっていて、毎回愕然としています。
なのに、小学生の頃(四半世紀前)に覚えた日本国憲法の前文は、未だにスラスラ言えるんです。驚き。
「いつ使うねん」とツッコミたくなるくらい、一度も活躍したことがない記憶なのに、思い出すたびにちゃんと頭の引き出しにしまわれていて、我ながらびっくりします。
そんなわけで、今日はこの現象の理由をちょっとだけ調べてみる事にしました。(唐突)
👶 子ども時代の脳は“最強の吸収マシン”
子どもの脳は「吸収力」が桁違い。
いやいや、、のっけから身も蓋もない・・・。
『そうでしょうね』としかならない理由ですが、やはりそうなんです。
そもそも記憶力は10代前半〜20代前半がピークだと言われていて、その頃に覚えたことは、特に強く定着しやすいんです。
さらに、小学校では音読・暗唱を何度も繰り返すという学習スタイル。
繰り返し + 音 + 意味づけ
この“記憶のゴールデンコンビ”が、定着を強く後押ししてくれていた訳です。
🎵 音とリズムが記憶を助けてくれる
「掛け算九九」や「百人一首」は、どちらもリズムがあります。五七五七七の定型句や、耳に残る音調。
これは歌詞やメロディと同じで、音の流れと一緒に覚えた記憶は長持ちしやすいんです。
そういえば、中学生の時には「色相環」や「中国の国名の移り変わり」を覚えるための替え歌や、歴史の年代を覚える語呂合わせを先輩に伝授してもらって覚えたのですが、それも未だに覚えています。全然使ったことないけど。
🧩 「上の句を聞くと下の句が出てくる」の正体
百人一首で「上の句」を言われた瞬間、条件反射のように「下の句」が出てくるような経験、ありませんか?
これは「手がかり依存記憶(cue-dependent memory)」と呼ばれる現象。
きっかけ(cue)があることで、それに紐づいた記憶が自然と呼び出されるんです。
📚 リボーの法則との関係
この現象は、心理学でいう「リボーの法則」とも関係しています。
「記憶は古いものから順に保たれやすく、新しいものほど失われやすい」
19世紀の心理学者テオドール・リボーが提唱したこの法則は、特に記憶障害の患者の観察から導かれました。
あなたが今ふと思い出す、昔の記憶たちは、長年のあいだ脳にじっくり漬け込まれた「発酵食品」のようなものかもしれません🧂
確かに、私の感覚でも、小学生の頃に覚えたことが一番よく残っていて、そこから年齢が上がるにつれて定着度が落ちていっている感じがします。
🤖 最近の記憶が抜けやすい理由
じゃあ、大人になってからの記憶はなぜこんなに抜けやすいのか? 理由はいくつかあるようです。
- ■ 覚えたいことが多すぎるのに、じっくり詰め込む時間が足りない
- ■ 覚えるための工夫(歌や語呂合わせなど)がされていない
- ■ 情報が多すぎて、脳が「これは重要じゃないな」と判断している
こうした要素が重なり、最近の記憶はどうしても定着しにくいんですね。
📝 まとめ

- 🧠子ども時代はそもそもの吸収力が高く、更に「繰り返し・音・リズム」で記憶が定着
- 🧠「上の句→下の句」のような記憶は、手がかり(cue)で引き出される
- 🧠リボーの法則により、昔の記憶は脳に定着しやすい
- 🧠大人になると記憶が薄れやすいのは、脳(記憶)の仕組みにも原因あり
こうしてみると、昔の「詰め込み教育」って、案外ちゃんと理にかなってたのかもしれません。
脳の吸収力が高いうちは、意味なんて後回しでいいから、とにかく頭の引き出しにたくさん詰め込んでおいたらいいのかもしれません。
今はもう“最強記憶マシン”ではなくなってしまった大人の脳。
だけど、そのぶん 思考力 や 点と点をつなげる力 は育ってる(はず!)。
網で水をすくうような記憶作業も、何度もすくえば、少しずつ水滴はたまっていくはずです。
あとは、それが蒸発しないうちに(!)、子どものころ以上に
意味を考えたり、体験を伴わせたり、感情を乗せたりして、
自分のものにしていく工夫をする事が大事なのかもしれません。
腐らずに繰り返し手を動かすことですね。