十五夜をもっと楽しく!昔の人の心に触れるお月見ガイド
日常
なつめ
夜空に浮かぶ、まん丸な月。
秋の風物詩である「お月見」は、私たちにとって身近な行事ですよね。
でも、その歴史や文化については、あまり知らない方も多いのではないでしょうか。
「お月見=お団子を食べて月を眺める日」と思っていた方もいるかもしれません。
今回は、お月見の歴史や、現代でも楽しめる工夫を、簡単にご紹介します。
お月見の基礎知識
まずは、お月見の基本的な知識から見ていきましょう。
お月見とは、美しい月を眺めたり、その年の収穫に感謝したりする行事です。
以下の3つを知っておくと、お月見がもっと楽しくなりますよ。
- 中秋の名月(ちゅうしゅうのめいげつ):旧暦では、秋は7月から9月。その真ん中である8月は「中秋」と呼ばれていました。この時期は空気が澄んで、月が一年で最もきれいに見えるとされています。
- 十五夜(じゅうごや):旧暦で毎月15日の夜を指します。十五夜は毎月ありますが、「中秋の名月」が特別に美しいことから、この8月の十五夜だけが特に有名になりました。
- 十三夜(じゅうさんや):十五夜の約1か月後、旧暦9月13日の月。「後の月見」と呼ばれ、十五夜と合わせて楽しむのが縁起がいいとされていました。
ちなみに、2025年の「中秋の名月」は10月6日(月)です。
今とは違う?昔のお月見
お月見の風習は、平安時代に中国から伝わったといわれています。
当時の貴族たちは宴を開き、月を愛でていましたが、その楽しみ方は今とは少し違いました。
月を直接見るのではなく、水面に映る姿を鑑賞することが風流とされていたのです。
池や川の水面、盃に注いだお酒に映る月を眺め、揺れる光を楽しんだそうです。
静かに水面を見つめるその様子は、想像するだけでも趣がありますよね。いかにも平安時代といった感じがします。
お月見にはなぜお団子?
江戸時代には、お月見が庶民の暮らしにも広まり、収穫祭と深く結びつきました。
昔から月は農業の神様と考えられ、人々は収穫した米で作った団子をお供えし、「今年も恵みをありがとう」という感謝の気持ちを表したのです。
お供えした団子は神聖なものとされ、お月見の後に食べることで無病息災や幸福を授かると信じられていました。
月見団子にも違いが?

関東では、満月に見立てて丸い団子を積んでお供えします。十五夜にちなみ15個、または1年の満月の数である12個(うるう年は13個)をお供えします。

関西では、お月見が別名「芋名月(いもめいげつ)」と呼ばれるように、月に里芋などの収穫物を供えて感謝するという意味を込めて、里芋に似せた楕円形の団子にこしあんを巻くのが一般的です。
三つの月見
「十五夜」「十三夜」に加え、旧暦10月10日の十日夜(とうかんや)があり、この三つすべてを楽しむと縁起がいいとされました。
今年(2025年)の三つの月見の日付は以下の通りです。
- 🌕 十五夜: 10月6日
- 🌔 十三夜: 11月2日
- 🌓 十日夜: 11月29日
お月見で心を整えてみる
お月見は、月を眺めながらお団子を食べるというイメージが強いですが、
夜空をゆっくり見上げて、心静かに休む時間を作ってみるのはいかがでしょうか。
心を休める時間に
静かな夜空を見上げると、自然と気持ちが落ち着くものです。
柔らかな黄色の月を眺めながら過ごすひとときは、頭を切り替えたり、気持ちを整理したりする助けになるかもしれません。
季節や自然を感じる
月の形や明るさに目を向けると、「もう秋なんだな」と季節の移ろいを感じたり、
「日が短くなったな」「空気が澄んできたな」と自然の変化に気づくこともありそうです。
普段の生活では見過ごしてしまう小さな変化に気づけるのも、お月見の楽しみのひとつかもしれません。
月を見ながら過ごす時間
家族や友人と月を眺めるのもいいですし、一人で静かに夜空を見上げるのも素敵です。
同じ景色を見ながら語らう時間や、一人で心を落ち着ける時間は、どちらも特別なひとときになりそうですね。
月が見えなくても楽しめる心の中の月
お月見の日に曇ったり雨が降ったりしても、がっかりする必要はありません。
昔の人は、そんな月の見えない夜を特別な言葉で呼んでいました。それが雨月(うげつ)と無月(むげつ)です。
- 雨月(うげつ) 十五夜に雨で月が見えないこと
- 無月(むげつ) 十五夜に雲などで月が隠れて見えないこと
どちらの場合も、目に月が見えなくても、ほのかに漂う光や静かな夜の雰囲気を楽しんだり、宴を開いたりして過ごしていたみたいですよ。
月を直接見られなくても、その夜の空や月の存在を心に思い描きながら楽しむ――それもお月見の楽しみ方のひとつだったようです。
本当に風流ですね。
お月見を楽しんでみる
昔ながらのお月見の習慣を、今の暮らしに合う形で取り入れてみませんか?
今すぐできる簡単なアイデアをご紹介します。
- 🎑 グラスに映る月を眺める
お酒やお茶を注いだグラスに月を映せば、特別な気分になれそうです。
窓のそばでグラスを手に待つだけで、平安貴族が楽しんだような風流な時間を味わえるかもしれませんね。 - 🎑 丸いお菓子でお団子気分
団子を準備するのが難しければ、コンビニで買える丸いお菓子を用意してみるのもいいですね。
どら焼きや大福などを月に見立てれば、いつものおやつがちょっとした月見スイーツになります。 - 🎑 食事に感謝してみる
お月見には、その年の収穫に感謝する気持ちも込められています。
月を眺めながら、今日の食事のありがたさを少し考えてみるだけで、いつものごはんがより豊かに感じられるかもしれません。 - 🎑 月に合わせた音楽を聴いてみる
昔の貴族たちは琴や笛を奏でて月を愛でたそうです。
今の時代なら、お気に入りの曲を選んで流してみるのも素敵ですね。
静かなジャズやクラシック、ヒーリング音楽など、月夜に合うと思う曲を探してみるのも楽しいかもしれません。 - 大覚寺(京都府):大沢池に舟を浮かべ、水面に映る月を眺める「観月の夕べ」が有名です。中国庭園を模して造られた庭から、風雅な月見を楽しめます。
- 石山寺(滋賀県):「源氏物語」の作者・紫式部が月を眺めて着想を得たという伝説があり、湖面に映る月の景色が名高い場所です。
お月見と奈良
ここまでお月見について見てきましたが、奈良県には、お月見に関係する名所があるんです。
それは、日本三大名月鑑賞地。実はその一つが猿沢池(さるさわいけ)なんです。
池のほとりから見える興福寺の五重塔と、水面に映る月の光は、昔の人々が楽しんだであろう風景を感じさせてくれます。
そして中秋の名月の日には、池の伝説にちなんだ采女祭りも行われます。
美しい装束の采女たちが舟から花扇を流す様子は、昔の人々の思いを今に伝えてくれるかのようです。
🌕 ほかの日本三大名月鑑賞地
どの名所も、月を眺めるときにぴったりの、風流な空間になっていますね。
お月見楽しもう
平安時代から始まったとされる十五夜のお月見。
ここまで続いてきた行事を、ただ月を眺めるだけでなく、心を休めたり、季節や自然の移ろいを感じたり、食事やお菓子を楽しむきっかけにしてみませんか。
月を眺める場所は名所だけでなく、それぞれが『ここなら月がきれいに見える』と思える場所がたくさんあると思います。
今年のお月見は、昔の人々のお月見に思いを馳せながら、「月がきれい」と感じる、自分だけの時間を楽しんでみるのもいいかもしれませんね。